2024.10.27
曲木の家具について
家具製作において欠かせない技術のひとつが「曲木」の工法。木材に水分や熱を加えて柔らかくし、一定の形に曲げる技術ですが、古代エジプト時代の家具や道具にはすでに使われていた痕跡があり、特にヨーロッパでは18世紀〜19世紀にかけて工業化され、現在まで続く家具製造技法として発展しました。
世界中で大ヒットしたトーネットの曲木椅子
曲木の技術を大きく発展させたのが「曲木家具の生みの親」とも言われるドイツ人職人のミヒャエル・トーネット。彼は1830年代に木材を蒸気で加熱して曲げると言う方法を開発。代表作である「NO.14」は1850年から1930年の間に5000万脚以上製造されたとも言われ、世界中で大ヒットしました。
この技術はシンプルで機能的なデザインが特徴の北欧家具にも大きな影響を与えます。特にデンマークやフィンランドでは曲木技術を駆使した家具が数多く作られており、アルヴァ・アアルトやアルネ・ヤコブセン、ハンス・J・ウェグナーといったデザイナー達が曲木の技法を用いた作品を生み出しています。
日本においても、曲木技術は伝統工芸の分野で用いられてきました。特に、秋田県の「大館曲げわっぱ」や新潟県の「曲物」などは、薄い木材を曲げて器を作るもので、日用品から装飾品に至るまで幅広く取り入れられています。また家具製作においては、飛騨高山の家具職人が曲木技術を取り入れた椅子を製作し、優れた耐久性と洗練されたデザインで国内外から評価されてきました。
可塑性という特徴によって硬い木が曲がる
曲木の基本的な原理は、木材に蒸気を当てることで細胞壁を柔らかくし、曲げたい形状に合わせて固定すると言うもの。具体的には、以下の手順で行われます。
1、蒸し処理:木材に高温の蒸気を当て、繊維を柔らかくします。通常、木材は1時間程度蒸され、曲げやすい状態にします。
2、曲げ加工:柔らかくなった木材を専用の型枠や治具にセットし、力を加えながら曲げます。この際、型枠に沿って曲げられることで、均一なカーブが形成されます。
3、乾燥・固定:曲げた状態を保つために、固定具を用いて形状を保ったまま乾燥させます。この段階で木材の内部構造が再び硬化し、曲がった状態が定着します。
4、仕上げ加工:乾燥後に仕上げとして研磨や塗装が施され、完成形へと仕上げられます。
曲木に使う木材には硬さに加え、粘り気が求められる
曲木に使用される木材は柔軟性と耐久性を兼ね備えたものが求められるため、以下のような樹種が主に用いられます。
・ブナ材(ビーチ材):弾力性と強度があり、蒸気に対する反応も良好で、均一に曲がりやすい特徴があります。そのため、トーネットチェアやYチェアなど代表的な曲木家具に頻繁に使用されています。
・オーク材:硬質で耐久性が高く、表面の質感が美しいため、北欧家具でよく用いられます。オーク材は乾燥に強く、形状をしっかりと保てるため、長持ちする家具に適しています。
・楓材(メープル材):均質で、色が美しく、曲げやすい特徴があります。これにより、曲木技法を使用した椅子の背もたれやアーム部分などのデザインに使われます。
曲木技術の特徴は木材に無駄がなく、少ない材料で軽量かつ丈夫な家具が作れるところです。一般的な木製家具は、木材を切り出して形を作るため、木材の多くが無駄になりがちです。ですが曲木では木材を丸ごと活用でき、曲げることで自然な曲線を持つデザインが実現します。このため、木材の資源効率が非常に高く、エコロジーな観点でも評価されています。
弊社にも曲木の技術を活かした曲線の家具がたくさんあります。椅子の背もたれやアーム部分の美しい曲線を見る時には、ぜひそんなところにも注目してみてください。
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