STORY 01

山裾の小さな工場から生まれる
“そこにある”だけで美しい無垢の椅子

豊かな水源の町、福岡県朝倉市。山裾に広がる静かな田園地帯にその工場はあります。創業から50年。高い技術力と北欧家具を思わせる美しいデザインで、オリジナルの椅子を中心とした家具を開発・製造しています。

椅子の材料となる木材はウォールナット・ホワイトオーク・ブラックチェリ―の3種類。アメリカ産広葉樹はサイズや節の有無で3つのグレードに分けられているのですが、一枚の板から節のないクリアー材が最も大きく採れる、最高グレードの「FAS」を仕入れの基準としています。 板の状態で仕入れた木材は「木取り」の工程へ。木取りとは、家具のパーツごとの形状やサイズに合わせて木材をカットする作業です。全てをきれいに使い切るのは難しく、どうしても端材が出てしまうのですが、冬が近づくとこの端材を分けてもらいに近所に住む人がやって来ることも。しっかりと乾燥された広葉樹は日持ちがよく、薪ストーブの燃料として重宝されるのだそうです。小さなことですが、50年つづく誠実なものづくりの背後で木と人、工場と町を繋ぐいいサイクルが育まれていました。

仕上がりのなめらかさからは想像できない、加工前の背もたれ

一本の木から丸ごと削り出したような一体感

無垢材の温かな風合いを生かしつつ、機能性もデザイン性も高いプロダクトを生み出し続ける同社。背もたれの丸過ぎないカーブや、有機的で流れるようなアームラインには、とくに強いこだわりと卓越した技術力を感じます。
「座り心地の違いは、背もたれの位置・角度・カーブの度合い、また座面の高さなどが関係してきます。と同時に背もたれからアームというのは、その椅子の特徴を表現しやすい部分。背中のあたり具合や肘の手触りを大切にしながら、曲線美と直線美の融合したデザインにしています」
その曲線美に欠かせないのが、NCルータとよばれる機械です。コンピュータ制御により、1000分の1ミリ単位の設定で複雑な曲面を正確に削り出すことが可能に。Story & Factoryが取り扱う椅子にもこのNCが活躍していますが、中でも高い精度が求められるのが「SF8」と「SF9」です。この椅子の背もたれ、実は一枚の板ではなく無垢材を4層に重ねて削り出したもの。加工前は無骨な木のブロックのようで、完成した椅子の面影はゼロと言ってもいいほどです。その背もたれ部を、同じく4層に重ねたアーム部とフィンガージョイントで接合し、NCで何十回も削りながら少しずつアールを描いていきます。大変な手間と時間を要するつくり方ですが、これによって背もたれからアームに完全な一体感が生まれ、強度と美しさを両立した椅子になるのです。

大量に発生する木くずは、牧場で牛舎の寝床に利用されるそう

しかしどれだけ高性能な機械を使っていても、最後は人の手が頼り。それが、最終的に背もたれの表情を決めるといわれる研磨の工程です。熟練の職人が自分の目と手の感覚だけを頼りに、繊細に磨き上げていきます。わずかな力加減が仕上がりに影響するので、経験とイメージが体に染みついていないと難しい仕事。「もっといい機械を入れられたら、後の研磨が楽になるんだけど」。そう社長は笑いますが、一本の木からそのままの姿で削り出されたような一体感と、いつまでも触っていたくなるほど滑らかな木肌は、人の手がしっかりとかけられた誠実なものづくりの証なのです。

(SF6・SF7は背もたれを曲げ木の工法で製作しています)

人が手で触れる部分は特に念入りに、時間をかけて磨かれる

パーツごとに木目は違っても見事な一体感が出るのは、手仕事による丁寧な研磨の為せるワザ

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